継ぎ足歩行とは?

継ぎ足歩行は, 床面に引いた一直線上を、一側のつま先に対側の踵を接触させながら歩行する応用歩行の1つです。継ぎ足歩行は特に前額面上の支持基底面が狭小化するため、バランスの評価やバランス向上練習に用いられています。
継ぎ足歩行
東京都老人総合研究所監修の資料にも、継ぎ足歩行は転倒予防体操の1つとして紹介されています。







バランスは静的バランスと動的バランスに分類されます。前者は支持基底面内でのバランス保持である静的バランスに対して、動的バランスは支持基底面が移動した状態でのバランス保持を示します(Woollacott and Tang, 1997; 島田と内山, 2001)。
内山と島田(1999)は、さらに、支持基底面のみでなく、外力、随意的な運動という要素を加えて、バランスを、静的姿勢保持力、外乱負荷応答、随意運動(支持基底面内)、随意運動(支持基底面外)の4種に分類しています。この分類では、継ぎ足歩行中の平衡機能は動的バランス、あるいは随意運動(支持基底面外)に分類されます。
しかし、教科書をみても、継ぎ足歩行の細かい手順や、どうなったときに「バランスが悪い」と判断するか、評価可能な具体的な対象者などの、具体的な判断方法などは、記載されていません。
 
 
継ぎ足歩行は特別な器具を使用しないため、臨床応用が簡単という利点がありますが、評価指標として用いる場合、 評価手順が統一されていません。
継ぎ足歩行をバランス評価として使用している先行研究では、評価基準は次の4つの方法に大別されます。
、方法U:一定距離のmis-step(s)数により評価する方法、方法V:一定距離の所要時間により評価する方法、その他の方法。
方法T:mis-stepまでの歩数により評価する方法
この方法は、さらに次の2つに分けられます。
方法T-a : mis-stepまでの歩数によりランク分けする方法
Dargent-Molinaら(1996)が、4歩の継ぎ足歩行の可否により4段階に段階分けしています。岡田ら(2001)も、Dargent-Molinaらと同じ方法を使って評価しています。
Wrisleyら(2004)は、10項目で構成される歩行能力の評価バッテリであるFGA(Functional Gait Assessment)の下位項目に継ぎ足歩行を含めています。Wrisleyらの方法では、上肢を胸の前に組んだ状態で3.6m継ぎ足歩行させ、最大10歩までの歩数を計測して4段階で評価しています。でも、7歩しかできなかった場合は、「中等度」と「軽度」のどっちになるのかはわかりません。
また、いずれの評価方法についても、「よろける」や「ふらつき」といったmis-stepについての細かい定義はありません。
研究者  測定方法 
Dargent-Molinaら
(1996) 
mis-stepまでの歩数で次の4段階に評価
 1: 4歩を確実に継ぎ足歩行できる
 2: 3歩まででよろけてしまう
 3: 通常歩行はできるが、継ぎ足姿勢をとることができない
 4: 杖歩行しかできない 
岡田ら(2001)  Dargent-Molinaら(1996)の方法と同じ 
Wrisleyら(2004)  上肢を胸の前に組んだ状態で3.6m継ぎ足歩行させ、最大10歩までの歩数から次の4段階で評価
 3: normal(正常) ふらつきなしに10歩可能
 2: mild impairment(軽度障害) 7〜9歩可能
 1: moderate impairment(中等度障害) 4〜7歩可能
 0: severe impairment(重度障害) 3歩以下
方法T-b : mis-stepまでの歩数そのものを用いる方法
複数の報告がありますが、測定方法を細かく規定した報告は多くありません。
 研究者 測定方法 
Freglyら(1972)  上肢を胸の前で組んだ状態で、幅3/4インチ(1.9cm)、長さ8フィート(約2.4m)の
板の上を継ぎ足歩行させ、歩数を計測(最大15歩) 
金ら(2001)  2.5mのテープ上の継ぎ足歩行の歩数を計測 
金ら(2002)  2.5mのテープ上の継ぎ足歩行の歩数を2回計測。良い数値を採用 
上岡ら(2003)  歩行距離等詳細な手順は不明 
征矢野ら(2005)  歩数を計測。歩行距離等詳細な手順は不明 
方法U: 一定距離のmis-step(s)数により評価する方法
研究者  測定方法  mis-step(s)の定義 
Nevittら(1989) 幅5cm、長さ2mのテープ上を
継ぎ足歩行させ、"error”数を計測 
a. 足部が線から逸脱した場合
b. 測定者や周りのものに触ったり、つかまったりした場合
c. 踵とつま先が離れた場合 
Chuら(1999)  2m中の継ぎ足歩行中の"error"数を計測  記載なし 
Kerschan-Schindlら(2001)  Nevitt(1989)と同じ  Nevitt(1989)と同じ 
方法V: 一定距離の所要時間により評価する方法
継ぎ足歩行の所要時間を測定する課題距離が10m(Gunterら 2000), 20フィート(約6.1m, Beanら 2002, Nelsonら 1989 2004), 6m(Fiataroneら 1990), 5m(Liuら 2005)の複数の報告があります。
さらに、歩行の方向に関しても、前進のみ(Fiataroneら 1990, Gunterら 2000, Nelsonら 2004, Liuら 2005)の他に、後進(Nelsonら 1994)、前後進の合計時間(Beanら 2002)といったように複数の報告があります。
加えて、Liuら(2005)は、5mの継ぎ足歩行の所要時間に、ミス・ステップ数を2倍したものを加算し、独自の指標であるTGI(Tandem Gait Index)を作成して、検討しています。
 研究者 測定方法     その他
歩行路  進行方向  mis-step(s)の定義
Nelsonら(1989)  20フィート
(約6.1m) 
後進  記載なし   
Fiataroneら(1990)  6m  前進  記載なし 
Gunterら(2000) 10m  前進  記載なし   
Beanら(2002)  20フィート
(約6.1m) 
前後進  記載なし 
Nelsonら (2004)  20フィート
(約6.1m)  
前進  記載なし  
Liuら (2005)  5m  前進  つま先が対側の踵あるいは
足側面に接触しない場合
TGI
(Tandem Gait Index) 
その他に、20歩の所要時間を計測する方法(田口, 2005)などもあります。
そこで、比較的先行研究が多く、細かく評価可能な方法V(一定距離の所要時間により評価する方法)に着目して、継ぎ足歩行が高齢者の運動機能評価指標として使用できるのかを検討しています。
研究論文
下井俊典, 谷浩明: Bland-Altman分析を用いた継ぎ足歩行テストの検者内・検者間信頼性の検討
理学療法科学, 2008, 23(5): 625-631
下井俊典, 谷浩明: 最小可検変化量を用いた2種類の継ぎ足歩行テストの絶対信頼性の検討
理学療法科学, 2010, 25(1): 49-53

参考文献