3. 系統誤差の有無・種類の確認

次に, この研究デザインによる結果としての測定値に, 系統誤差が混入しているかどうかを検討する。この検討のための統計学的手法の1つに, Bland- Altman分析(Bland-Altman analyasis, Bland-Altman method)がある。Bland-Altman分析とは, 2つの測定値の差(difference, a-b, 以下d)をy軸、2つの測定値の平均値((a+b)/2)をx軸にプロットした散布図(Bland-Altman plot, Bland-Altman graphs, difference plot)を作成し, それら測定値が内包する系統誤差の有無を可視的, あるいは統計学的に明らかにする方法である6)7)。つまり、次の座標で示される点AをプロットするとBland-Altman plotが作成できる。
以下に具体的な数値を用いた手順を示す。
【例1】
介護予防教室に参加した20名の高齢者の5m継ぎ足歩行時間を、同一検者が7日間の測定間隔をおいて2回測定した結果を表1に示す。
 表1
作成されたBland-Altman plotから系統誤差の有無が可視的に確認できる。テスト、再テストの測定値が測定回数にかかわらず全く同じならば、y値(a-b)は0(ゼロ)となるため、Bland-Altman plotはx軸に収束する散布図となる。系統誤差のうち加算誤差は、真の値にかかわらず特定方向に生じる誤差であることから、加算誤差を有する測定値のBland-Altman plotはx軸から正あるいは負方向に偏った分布を示す(図2)。対して比例誤差は真の値に比例して大きくなる誤差であることから、比例誤差のある測定値のBland-Altman plotは右側に開いた扇形の分布となる(図3)。

図2 Bland-Altman plot (加算誤差が認められる場合)


図3 Bland-Altman plot (比例誤差が認められる場合)

さらに可視的だけではなく統計学的手法を用いて、これら系統誤差の有無を検定することができる。
2つの測定値の差の平均(d)の95%信頼区間(95%CI; coefficient interval)が0(ゼロ)を含まない場合、測定値が完全に一致するx軸から正・負の一定方向に分布していることを示すため、加算誤差が存在すると判断できる。dの95%信頼区間は、標本数(n)、dの標準偏差(SDd)、自由度n-1のt値から、式1で求められる。
例1では、
 ※注2
 ※注3
t = 2.045 ※注4
より、求める95% 信頼区間は次のように求められる。
例1では求めた95%信頼区間が0(ゼロ)を含まない。すなわち図2で可視的にdの分布が正方向に偏っていることが統計学的にも明らかとなり、加算誤差が存在すると判断できる6)
注2:平均値はエクセルのaverage関数で求めることができる
注3:標準偏差はエクセルのstdev関数で求めることができる
注4:t値はエクセルのtinv関数で求めることができる
対して比例誤差の有無は、Bland-Altman plotについて回帰式を算出し、回帰の有意性の検定を行うことで判断できる。本稿では、より簡便な方法として、数学的には同じ意味を有する2変数の相関係数を算出し、相関の有意性の検定により有意な相関が認められれば比例誤差があると判断する8)
【例2】
介護予防教室に参加した20名の高齢者の5m継ぎ足歩行時間を、例1とは異なる検者が7日間の測定間隔をおいて2回測定した結果を表2、図3に示す。
 表2
無相関検定は式2で求められたt値が自由度n-2、有意水準5%のt値よも大きければ有意な相関があるとして、比例誤差が存在すると判断できる。
例2の相関係数(r)は、

r = 0.37 ※注5

と求められるため、t値は次のように求められる。
自由度28, 有意水準5%のt値は2.048であるから、例2では、図3で右側に開いた扇形の分布として可視的に確認された比例誤差が、統計学的にも明らかとなり、比例誤差が存在すると判断できる。
注5:相関係数はエクセルのcorrel関数で求めることができる

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