ご父兄の方へ

国際医療福祉大学理学療法学科への入学に際して、よくいただくご質問と回答、オープンキャンパスや保護者懇談会の様子などをご紹介します

理学療法士は、将来性が期待できない職業と聞いたのですが、大丈夫でしょうか?

「少子高齢化社会なので、将来性のある職業ですね」とも言われます。しかし、近年の理学療法士養成校の増加に伴い、近い将来に飽和状態になるのではないか、と心配される向きもあります。

しかし残念ながら、将来的にずっと右肩上がりの業界とも、将来性がない業界とも言い切れないというのが正直なところです。
というのも、理学療法士が働く医療・介護分野は、それぞれ医療保険、介護保険という社会保険制度の枠組みの中にあります。こうした社会保険制度では、厚生労働省が設定した診療報酬・介護報酬体系により、医療機関や介護施設の収入が決まります。つまり、理学療法士の働く場所や収入の「基本的な」部分は、厚生労働省の方針で決められてしまうのです。これを我々は「行政リスク」と呼んでいます。

ではリハビリテーションについて、厚生労働省はどのように考えているのでしょうか。
この数年間、医療機関や介護施設は収入を増やしにくい状況でした。小泉元首相の「骨太の方針(2006年度)」で、社会保障費を抑制するという基本方針が決まっていたからです。また、国家予算の大部分を国債に求める現状では、医療費を含めた社会保障費を抑制したいという厚生労働省の基本的な考えは変わりません。
しかし、リハビリテーションについては、重点化しつつ拡大しようという、積極的な考えを持っています。特に、リハビリテーションを含めた「在宅医療」については、現状よりも積極的に人材や予算を投資しようとしています。つまり今後は、従来の医療機関で勤務する理学療法士の養成も必要ですが、「在宅」でリハビリテーションを展開できる理学療法士が、今以上に求められてくるのです。
ですので、少子高齢化社会や理学療法士養成校の増加という側面のみから、一概に理学療法士の将来性について述べるのは、ちょっと問題があるのです。

また、「理学療法士」という資格があるから安泰、という時代も過去のものです。

現状では、理学療法の業界で、正規雇用と非正規雇用間の格差は生まれていません。
でも、資格の有無と格差の有無は無関係になっています。理学療法士と同じ国家資格の保育士や介護福祉士でも、非正規雇用で、低給与、無・低賞与で働いている人が増加しています。
理学療法士養成校の数が増加していることを考えると、近い将来、理学療法士にも正規・非正規雇用の格差が生じてくることが考えられます。

では、これから理学療法士を目指す場合は、どうすればいいのでしょうか?

個人的には、「付加価値」を持った理学療法士になれるか、がキーポイントではないかと考えています。
つまり、単に理学療法士という免許を持っているだけではなく、もう1つの、あるいは2つの違う能力を持っているかどうかが問われるのではないでしょうか。「付加価値」とは、もちろん前述した「在宅」でリハビリテーションを展開できる知識や技術かもしれません。あるいは、研究して理学療法の新しい根拠を臨床に応用できることや、臨床でのマネージメント能力かもしれません。
こうした「付加価値」を学ぶ機会があるのか、つまり、職業の準備(国家資格合格)以外の教育的オプションがあるのか。あるいは学生が「付加価値」が得られるように学校側が考えているのか、というのも、今後の理学療法士養成校の選ぶポイントかもしれません。

理学療法学科は他の学科に比べて倍率が高いので、あきらめようと思っているのですが…

倍率や偏差値で職業を選択することは、あまりお勧めできません。

同じリハビリテーション専門職でも、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、その考え方や手段などが違う、別の職種です。もし、倍率などを勘案して、作業療法や言語聴覚学科への入学に変更することを考えている場合は、もう一度、どの職業になりたいかを考えるべきです。

大学か専門学校かで迷っているのですが…

理学療法士の免許を取得するのならば、大学でも専門学校でも国家試験の受験資格が得られますので、大学と専門学校の間に大きな差はありません。また、理学療法業界の現状として、学閥や出身校による格差がありません。このため、理学療法士になるという目的だけを考えた場合、理学療法士養成校を選択する大きな理由はないのかもしれません。

しかし、個人的な意見ですが、理学療法士養成校を選択する際に、大学か専門学校かではなく、「大学院への進学条件」で判断してもいいのではないかと思います。

「まだ、大学や専門学校にも進学してもいないのに、大学院の話なんて…」と思われるかもしれません。ましてや、「理学療法士という臨床家を目指していて、研究者になるわけではない」とも思われるかもしれません。
もちろん、「必ず大学院に進学しなければならない」、あるいは「すべき」とは思いませんが、大学院への進学の「可能性」は考慮すべきと思います。
というのも、臨床家としての理学療法士にとって、実際に臨床で実践・展開している理学療法の「根拠(evidence)」を構築することも、重要な職務なのです。理学療法士と研究能力については、こちらに詳しく書きましたので、ご覧ください。

では、結局、どういう理学療法養成校に進学すればいいのでしょうか。

一口に専門学校と言っても、修業年限が3年か4年かで少し異なります。3年制の専門学校を卒業すると、「専門士」という学位を取得することができます。対して4年制の専門学校を卒業すると、「高度専門士」という学位を取得することができます。この高度専門士は、国内では学部卒業生と同等とみなされ、「学士」とほぼ同等に取り扱われます。このため高度専門士は、大学院修士課程(博士前期課程)の入学資格を有しています。

奨学金を借りるなどの手段を考えてもなお、経済的な余裕がなければ、3年制の専門学校や短期大学、あるいは働きながら通学できる夜間を選択すべきでしょう。
でも、もし経済的な問題がなかったり少ないのでしたら、上記の理由から、次の点も理学療法士養成校を選ぶ際に勘案してみてください。
1) 大学院への進学資格が得られるか
2) 養成校の最終学年で「(卒業)研究」(一般大学でいう「卒業論文」)の科目があり、学生に積極的に履修や研究を奨励しているか
3) その大学に大学院があって、高度で専門的な教育体制を整えているか
こうした環境も、前述の理学療法士の「付加価値」につながるものと考えています。

ご注意

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