統計学の本

学生や院生から「どういった本を読んだらいいですか?」という質問を一番受けるのが、統計学です。
でも残念ながら、この一冊を読めば統計の全てがわかるという本はありません。数学者が考える統計学と、われわれ臨床をベースとする研究者が必要とする統計学は異なります。同様に、卒業研究で必要とする統計学の知識レベルと、大学院生で必要とする統計学の知識レベルも違います(のはずです)。
ですので、ここでは、個人的に使用頻度の高い統計学の本や、お勧めするポイントが明確な統計学の本をご紹介します。

あなたもできるデータの処理と解析
岩淵千明編著
福村出版, 1997
個人的には、これから研究で統計学的手法を使おうとする人に、最初に勧める本がこの本です。
データの処理と解析という表題ですが、データを処理することは第W章以降で述べられています。第T・U章では「データ」とは何かという設問から、「尺度」「操作的定義」などの研究の基礎知識や研究方法の種類、実験デザインを概説しています。続く第3章では、基本統計量を解説しています。さらに最終章では、多変量解析についても、目的別にどの解析手法を選択すべきかから教えてくれるのです。
ちょっと表紙がおどろおどろしいのですが、統計学的手法のみでなく、研究法全般を概説している名著といっても過言ではないと思います。
バイオサイエンスの統計学―正しく活用するための実践理論

市原 清志
南江堂, 1990
この本の特徴の1つは、「検定」手法を中心に書かれているということです。
理学療法分野の研究の統計学的手法としては、複数の群間の差についての検定が多用されます。ですので、比較する群が2群か、それ以上か、というテーマを中心にし、次に取り扱うデータが連続変数か否かで、選択すべき検定方法を検索できるという本の構成は、読者の知識レベルを限定しないものになっていると思います。
この本のもう1つの特徴は、各統計学的手法の手順と解釈方法を、具体的に、且つわかりやすく解説しているところです。
例えば、比率の検定では、n数から、同じ比率の検定でも、選択すべき計算方法を教えてくれます。さらに、例えば二項検定を使用するならば、
という数式を用いなければなりませんが、この本で示されている具体例にある、nxrpの使い方を応用すれば、高校数学水準の知識さえあれば、手計算で検定ができます。
心理学のためのデータ解析テクニカルブック

森 敏昭, 吉田寿夫編著
北大路書房, 1990年
この本は、下井の指導教員である谷浩明先生(国際医療福祉大学小田原保健医療学部教授)から、何度となく読むことを指示され、購入した本です。
なんと、この本を大学の英語の先生の書庫でも見つけました。業界を超えたバイブル的存在として、紹介します。
例えば、裏表紙を開けてみると、尺度や条件の数別に、使用すべきノンパラメトリック検定がまとめられている表などは、個人的に重宝しましたが、前に紹介した2冊に比べると、専門的な内容になっています。まずは、各統計学的手法に合わせて、辞書的に使用していくことをお勧めします。
個人的には、3条件以上のノンパラメトリック的手法の下位検定の際、有意水準を名義水準に計算する「ライアン法」などを適用する際などに、参考としています。
推計学のすすめ 決定と計画の科学
佐藤信著
講談社ブルーバックス, 1979年
この本は、t検定やχ2検定など各統計学的手法の考え方を、わかりやすく解説してくれます。いままでの本が実用書であるのに対して、これは気軽に統計学を学ぶことができる本です。
個人的には、2種類のお酒に集まるショウジョウバエの数に偏りがあるかどうかを、統計学的に検討する「猩々バエが酒を鑑定する話」というくだりで、χ2検定の使い方や、「期待値」を理解しました。